FIP制度とは?FITとの違い・制度概要をわかりやすく解説

2021.08.12
用語解説電力業界制度
FIP制度とは?FITとの違い・制度概要をわかりやすく解説

現在ご覧いただいている多くの方々がご存じかとは思いますが、2012年、再エネ導入を促すための施策として「FIT制度」が設けられました。

FIT制度(再生可能エネルギーの固定買取制度)とは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を、国が定める価格で一定期間電気事業者が買い取ることを義務付ける制度です。

この制度により再エネ導入が急速に加速しましたが、この先、日本が目指す「2050年カーボンニュートラル」に向けた新たな方策の一つとしてこの「FIT制度」に加え、2022年4月から市場連動型となる「FIP制度」が導入されました。

そこで今回は、FIP制度の詳細について解説します。

FIP制度とは?

FIP制度とは、風力や太陽光といった再生可能エネルギーを売電した際、売電価格に対して一定のプレミアム価格(補助額)が上乗せされる制度のことです。「Feed In Premium(フィードインプレミアム)の略称で、再生可能エネルギーの促進と自立化を目的としています。

FIP制度では、FIP価格として再生可能エネルギー電力の配給に必要な費用などが考慮された「基準価格」が定められています。発電事業者が売電した際に期待できる平均売電収入を「参照価格」として、基準価格から参照価格を控除した金額が交付される仕組みです。

なお、基準価格は交付期間の20年にわたり固定され、制度開始当初はFIT制度の調達価格と同水準とされています。参照価格は市場の平均価格を元にしているため、市場価格と連動して月ごとに変動します。

FIP制度は、販売収入に加えてプレミアム単価がインセンティブとして得られるのが魅力です。ドイツのような再生可能エネルギー導入が進んでいる国ではすでに取り入れられている制度で、日本では2022年4月よりスタートしています。

出典:掲載産業省資源エネルギー庁「再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート」

FIP制度の導入背景

FIP制度導入の背景には、2050年を目標としたカーボンニュートラルの実現があげられます。実現に向けて、政府は再生可能エネルギーの電源構成比率を引き上げることを目標としています。そのためにまず導入されたのが、FIT制度です。

FIT制度は、2012年に再生可能エネルギー電源を普及させることを目的として導入されました。しかし再生可能エネルギーの買い取りにはコストがかかり、利用者による再エネ賦課金の負担が課題となっています。また、さらなる拡大には火力発電のような従来の電源と同様に電力市場の状況に合わせた発電を行い、需要と供給のバランスを取ることが欠かせません。

このような再生可能エネルギー普及への課題を受けて、FIP制度の導入に至ります。FIP制度は、電力市場において再生可能エネルギーが主力電源となり、利用が拡大することを目指しています。

FIP制度とFIT制度の違い

FIP制度とFIT制度には明確な違いがあります。わかりやすく言うと、FIT制度は再生可能エネルギーを固定価格で買い取る制度です。通常、夜間の電力需要が少ないときは市場価格が安くなり、需要のある時間帯の価格は高くなります。しかし、FIT制度は市場価格に関係なく、一定価格で電力を買い取ります。そのため、どのタイミングで売電しても価格は変わりません。

一方、FIP制度は前年度の電力市場価格の平均から参照価格が決まり、時期や時間帯によって買取価格が変動します。変動する参照価格に一定のプレミアムが上乗せされるため、売るタイミングを選んで売電収入を上げることが可能です。

FIT制度は、固定価格で買い取ることで再生可能エネルギーを独自の電源として扱ってきました。しかしFIP制度は、そのほかの電源と同様に時期や時間帯で価格が変動し、売電の自由競争を促します。FIP制度によって再生可能エネルギーは収益を上げられる主要な電源と見なされ、発電事業者の参入が期待されています。

FIP制度のメリット・デメリット

FIP制度は、再生可能エネルギーを主力電源化する上でさまざまなメリットがあります。同時にデメリットもあり、今後の課題が見えてくるでしょう。ここではFIP制度の仕組みから得られるメリットとデメリットを紹介します。

FIP制度のメリット

FIP制度のメリットは、需給バランスを考えた発電・売電を行いやすい点です。戦略次第では収益を増やせるため、発電事業者にとって再生可能エネルギーは有用な電源となるでしょう。また、FIT制度満了後も支援を受けられる手段としても注目されています。

これらの3つのメリットについて詳しく解説します。

(1)需給バランスを維持しやすい

市場変動に応じて売電価格が変わるため、売電するタイミングを考えた発電計画が必要です。発電量の多い時間は余った電気を貯めて、電力使用量の多い時間帯に売電するなど、電力需給のバランスを意識するようになります。電気を無駄にすることなくピーク時の電力不足を回避でき、電力供給の安定化を促します。

(2)収益拡大が見込める

需給バランスを考えた売電は、収益拡大につながります。需要の高い時間帯は売電価格が上がるため、戦略次第では利益を増やせるでしょう。

(3)FIT制度終了後も再生可能エネルギーを推し進められる

FIT制度は期間が定められていて、満了後は支援が受けられなくなります。FIP制度に移行することで、引き続き支援制度を利用しながら再生可能エネルギーを促進できます。

FIP制度のデメリット

変動価格は売電収益の拡大が狙える一方で、収益の予測が難しいというデメリットが生じます。需給バランスを考えた売電方法や再生可能エネルギーの運用など、さまざまな戦略を練らなければなりません。蓄電するための設備のコストもデメリットとなりうるでしょう。

FIP制度に伴うデメリットをまとめると、以下のようになります。

(1)収益の見通しを立てにくい

FIP制度は1か月ごとに価格が変動し、中長期的な収益の見通しが把握しにくいでしょう。収益が予測できないと、再生可能エネルギー発電事業への参入をためらってしまう可能性があります。

(2)売電戦略や運用計画を練る必要がある

収益を上げるには、市場取引の傾向を分析しながら売電のタイミングや蓄電設備の導入、売電先など運用計画を立てる必要があります。FIT制度よりも発電事業者自身が考えて実施しなければならない点が多いでしょう。

(3)運用コストがかかる

蓄電池を設置する場合は、設備投資やメンテナンス費用など導入・運用コストがかかります。売電収入でコストを回収できるような運用が求められ、ハードルが高いと感じる事業者もいるでしょう。

FIP制度が電力市場にもたらす効果

FIP制度の導入により、再生可能エネルギー発電事業者は、プレミアムをもらうことによって、再エネへの投資のインセンティブが確保されます。

また、FIP制度の最大の特徴は市場を活用する点にあり、発電事業者は市場価格の高いときに発電し、市場価格が低いときには蓄電や自家消費により、市場に売る電力量を調整することが可能となります。このような工夫によって、収益が拡大できる点がメリットです。

反対に再生可能エネルギー発電事業者は、市場での売電収入が市場変動に加え、長期の気候変動や長期的な市場価格の下落などによる投資回収の予見性を損なうリスクがあります。この点は、発電事業者にとってはデメリットと言えるのではないでしょうか。

消費者目線で見ると、再エネ電力を求める環境意識の高い需要家にとっては、再エネ調達の選択肢が増えます。また、発電事業者の競争が起こることにより電力市場が活性化し、消費者にとっても安い電力を選ぶことが可能となることも期待できるでしょう。

FIP制度で利益を拡大するためには蓄電池の導入がおすすめ

FIP制度を活用し収益を高めるには、蓄電池の導入が欠かせません。FIP制度の特徴である変動価格での売電は、電力需要が高いタイミングに電気を売ることでメリットを得られます。しかし、太陽光発電や風力発電など自然エネルギーによる発電は、時間帯や自然条件によって発電量が左右され、需要が高い時間帯にたくさんの発電ができるとは限りません。発電量が多いタイミングに需要が少なく、電気が余ってしまうこともあるでしょう。

そこで発電設備と蓄電池を併用するなら、発電した電力が無駄にならず必要なときに使用できます。需要が多いときに売る電気がないという事態も防げ、売電収入を上げられます。

蓄電池は設備の導入費用が高い傾向にあり、導入をためらう再生可能エネルギー発電事業者も少なくありません。しかし、蓄電池を導入することで売電時間を調整し、より収益が高い時間帯に電気を売れるようになります。

まとめ

今後、再生可能エネルギーの更なる普及や2050年カーボンニュートラル(脱炭素社会)実現に向けて、FIP制度の導入は日本が目標とする再エネの主力電源化早期実現に向けた大きな一歩となります。

また、それと同時に電力関連の制度はどんどん複雑化していき、消費者側として正しく把握し、活用していく事が難しくなってきていることも事実です。

弊社、ホールエナジーでは、コスト削減を実現するための電力オークションはもちろん、再エネ導入の実現に向けて、柔軟に対応することが可能です。

もちろん、お客様の状況に合わせて取り組みも多種多様ではございますので、まずはお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。