「グリーン成長戦略」における電力分野の現在地

2021.09.14
ESGSDGsカーボンニュートラル再エネ調達再生可能エネルギー環境価値電力業界制度

読者の皆様の記憶にも新しいかと思いますが、
2020年10月、菅首相より「2050年カーボンニュートラル宣言」の所信表明がありました。

これは2050年までに脱炭素社会を実現し、温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目標としています。

そして国際的にも脱炭素化の機運が高まる中、“グリーン”に日本の次なる成長の機会を見出し、
2020年12月に策定されたのが「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」です。

今回は、電力供給の観点からグリーン成長戦略について解説させていただきます。

2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略とは?

冒頭でも説明した通り、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」が日本政府より発表され、
2020年12月、温暖化ガス排出量を2050年に実質ゼロにする工程表として
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されました。

温暖化への対応を、“経済成長の制約やコスト”と考える時代は終わり、“成長の機会”ととらえる時代になりつある昨今、
環境・社会・ガバナンスを重視した経営を行う企業へ投資する「ESG投資」は世界で3,000兆円にも及ぶとされており、
環境関連の投資は大きな存在となっています。

また、世界120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げ、
脱炭素社会実現に向けた政策を相次いで打ち出しており、
脱炭素化はまさに産業政策の観点からも重要な政策テーマとなりました。

「グリーン成長戦略」では、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、
今後、産業として成長が期待され、なおかつ温室効果ガスの排出を削減する観点からも
取り組みが不可欠と考えられる分野として、14の重要分野が設定されています。

【グリーン成長戦略「実行計画」の14分野】

  • 洋上風力・太陽光・地熱産業(次世代再生可能エネルギー)
  • 燃料アンモニア・水素産業
  • 次世代熱エネルギー産業
  • 原子力産業
  • 自動車・蓄電池産業
  • 半導体・情報通信産業
  • 船舶産業
  • 物流・人流・土木インフラ産業
  • 食料・農林水産業
  • 航空機産業
  • カーボンリサイクル・マテリアル産業
  • 住宅・建築物産業/次世代電力マネジメント産業
  • 資源循環関連産業
  • ライフスタイル関連産業

ご覧の通り、この14分野は幅広く、成長のフェーズも分野ごとにそれぞれ異なります。

2021年6月には関係省庁が連携し、より具体化した改訂版も発表され、
関係省庁が連携しながら実行計画をもとに様々な分野であらゆる手を打ちながら、
変革に挑戦することが求められていくこととなります。

グリーン成長戦略から見る「電力分野」

2050年カーボンニュートラルに向けて、電力部門の脱炭素化は大前提となります。

まず、電力部門以外のところでは利用するエネルギーを電気にシフトしていこと、
つまり、「電化」が中心に位置づけられています。

一般的に国民に馴染みの深い例でいうと
家庭においての給湯器やコンロの電化の推進であったり、
自動車分野において、乗用車新車販売「電気自動車100%」を目指し、
従来の「ガソリン車」から「電気自動車」へとシフトしていく動きというのが
イメージしやすいところになるのではないでしょうか。

要するに、
非電力分野の電化→電力の脱炭素化
が必要となり、どれだけ電化が進んでいったとしても、
電力分野において「脱炭素化」が進まなければカーボンニュートラルは困難だということになってしまいます。

グリーン成長戦略では14の分野のうちエネルギー関連産業として

  • 洋上風力・太陽光・地熱産業(次世代再生可能エネルギー)
  • 水素・燃料アンモニア産業
  • 次世代熱エネルギー産業
  • 原子力産業

の4つが挙げられています。

このように、再生可能エネルギーを最大限導入し、脱炭素化を目指す意図の方針を打ち出されていますが、
下の図は2019年度時点での電力を作るエネルギーの種類で分類した国内供給の構成と割合です。

国内供給の約7割は火力が占めており、
発電時に二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーは約18%となっています。

2050年度に総発電力に占める再生可能エネルギーの占める比率を
「50~60%」へ引き上げる方針を示している中、
現状を考えると急務な引き上げといえるでしょう。

再生可能エネルギーの主力電源化が進んでいる欧米諸国と比べて、
再生可能エネルギーによる発電が日本は大きく後れをとっており、
しかもそのコストは非常に高い現状です。

他国と比べて格段に大きなハンディを負っている現状からいかにして着地点を目指すのか、
官民が連携し、様々な分野であらゆる手を打ちながら、
変革に挑戦していくことが求められていくこととなるでしょう。

まとめ

今回はグリーン成長戦略から電力分野の現在地と今後のことについて触れていきました。

2050年のカーボンニュートラルに向けて、野心的な目標と現実のギャップを埋めるために、
今後、どのような形で脱炭素へ向けた取り組みを加速させるのか?
国民負担への影響はどのように変化していくのか?

など、今後の戦略の見直しには引き続き注目する必要がありそうです。

弊社、ホールエナジーでは、コスト削減を実現するための電力オークションはもちろん
再エネ導入の実現に向けて、柔軟に対応することが可能です。

もちろん、お客様の状況に合わせて取り組みも多種多様ではございますので
まずはお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。

参考サイト

2050 年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 2021年6月