今年の冬は大丈夫?LNG高騰による電力需給の現状

2021.10.25
電力卸売市場

2021年1月上旬、断続的な寒波により電力需要が大幅に増加し、LNG の在庫が減少したことで電力需給がひっ迫。

これに伴い市場への売り入札が減少し、売り切れ状態が継続した結果、一時、最高価格 250 円/kWh を超える過去に例を見ない水準で市場価格が高騰という事態が発生しました。

皆様の記憶にも新しい出来事であると思いますが、今冬もまた、電力の予備率が十分に確保できない可能性があるといわれています。

このように今冬も電力価格高騰が再び起こりかねないような見通しとなっていることから

今回は今冬の電力需給に関する現状、そして対策と電気を使う需要者への影響についてみていきたいと思います。

なぜ電力需給が逼迫しているのか?

そもそも、電力需給のひっ迫による電気料金の高騰はなぜここまで続いているのかというところから見ていきたいと思います。

このような状況が続く背景としては諸説あるものの、ひとつの原因として考えられるのはLNG価格の高騰であるといわれています。

 

2050年の脱炭素社会実現に向け、政府は再生可能エネルギーの最大限の導入を掲げるが、現状の日本は発電の76%をLNG火力や石炭火力に頼る火力大国です。

その中でも特にLNG火力の比率は37%(2019年度)と高く、LNGなどの輸入価格が電気料金を左右する形となりますが、そのLNG価格の高騰が止まらず、アジアのLNGのスポット価格が今年10月初旬には去年の同じ時期と比べて10倍を超える水準となり過去最高を記録しました。

日本の多くの電力会社は、LNGの約8割を長期契約で調達しており、スポットの価格はすぐには影響しないものの、

例えば昨年のような寒波が続き、想定以上にスポットでLNGを電力会社が購入しなければならない状況になるとコスト負担がかかり、電気を使う我々需要家にも電気料金の高騰として影響してしまうこととなってしまいます。

※1 出典:天然ガス価格が高騰! 電気料金どうなる?│NHK WEB NEWS

それでは何故、LNGの価格が高騰しているのでしょうか。

まず挙げられるのが中国の存在です。

中国では、脱炭素化を目指し発電燃料をよりCO2排出量が少ない石炭からLNGへとシフトさせることを目指しておりLNG輸入が急増しています。

2022年2月に北京オリンピックが開催されることにより、急速に環境シフトを進める中で今年1月から9月までの中国のLNG輸入量は約5,800万トンとなり、世界最大のLNG輸入国であった日本の約5,600万トン余りを初めて上回りました。

LNG市場に中国という巨大な買い手が現れたため、価格が大きく揺れ動く事態となってしまっているというわけです。

また欧州でもLNGの価格は高騰しており、

新型コロナウイルスの感染拡大で停滞していた経済がワクチン接種が進んだことなどにより活性化しエネルギー需要が増したこと、欧州各国が力を入れる風力発電が「風不足」で機能せず、火力発電に頼らざるを得ないという不運も重なったことで価格の高騰へとつながっている状況です。

天然ガス高騰でLNG関連銘柄に資金流入!LNG高騰で買われる銘柄と売られる銘柄とは? | 低位株・テーマ株ちゃんねる

 

今後の見通しと対策

それではこのような状況を踏まえて我が国「日本」ではどのような対応がとられているのか?我々需要家にはどのような影響が起こりうるのか?

について見ていこうと思います。

政府の対応

LNG市場の高騰はあるものの、資源エネルギー庁が実施している大手電力のLNG在庫調査によると、LNGの在庫は10月15日時点で約230万トンと、過去5年間で最高水準となり2020年同時期と比べて4割多いといわれています。

しかし昨冬の様な想定を超える需要増や発電設備のトラブルがあれば、電力需給が厳しくなる可能性があることを指摘し、今冬の電力不足に備え、経済産業省はLNGの確保に向けた初めての官民連絡会議を開きました。

この会議には関西電力やJERAなどの電力大手、東京ガスなどガス大手、LNGの開発・調達を手掛けるINPEX、総合商社の役員らが参加。燃料確保に万全を期すことを確認し、電力需給対策を示しました。

具体的な電力需給対策としては

①大手電力会社のLNGの在庫の監視

②発電事業者への燃料確保の要請

③供給力の確保

④一般需要家への省エネ要請

の4点です。

昨冬の断続的な寒波による電力需要の大幅な増加やLNGの在庫量低下によるLNG火力の稼働抑制などにより、電力需要のひっ迫した教訓を生かし、この冬に向けても状況の推移をモニタリングし、対策に取り組む構えがとられている形となっています。

需要家への影響

それでは電気を使う我々需要家への直接的な影響はどうなのでしょうか。

電気料金は燃料価格を自動反映する、「燃料調整制度」を踏まえて決められ、3カ月分の平均燃料価格を2カ月先の料金に反映する仕組みをとられています。

イメージ図

出典:東京電力エナジーパートナー 燃料費調整制度とは

この燃料調整額が2021年に入り、ほぼ毎月のように上昇する事態となっています。

東京電力管内の標準家庭の10月の電気料金は今年1月と比べて920円(15%)上昇しているといわれており、このままLNG価格の高騰が落ち着く気配を見せない中、燃料調達を海外からの輸入に依存し続ければ電気料金の上昇は免れないでしょう。

また気象庁は長期予報で「この冬は早い段階から強い寒気が入る可能性がある」と発表しており、LNG価格上昇が需要家の電気料金に影響し、家計を圧迫することとならないか気がかりな状況になりますね。

やはりこのような観点からも、脱炭素社会の実現、さらに電気料金の引き下げには火力発電比率の低減とともに、再エネのさらなるコスト低減や普及拡大、安定供給に向けた蓄電池や送配電網などの開発が欠かせないのではないかと思われ、政府には取り組みの加速が求められるのではないでしょうか。

まとめ

昨年から続く電力市場/LNG価格の高騰ですが、政府を中心に対策をとっているもの、根本的な問題解決には時間がかかることが予想されます。

また、2050年のカーボンニュートラルに向けて電力を取り巻く環境が日々変わっていることが事実である中、「価格と再エネ」の両立はより重要な課題となってくることでしょう。

我々電力を使う需要家も、最適な電力調達を行うためにも、市場の情報をウォッチし続ける必要がありそうですね。

弊社、ホールエナジーでは、コスト削減を実現するための電力オークションはもちろん
再エネ導入の実現に向けて、柔軟に対応することが可能です。

お客様の状況に合わせて取り組みも多種多様ではございますので
まずはお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。

電気の豆知識 第6回 「世界各国の電力事情」<前編>

参考資料

わが国の地熱発電-現状と課題- 2018年10月24日 日本地熱協会
再生可能エネルギーの歴史と未来 2018年02月1日 資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ
2021年度冬季の電力需給見通しを踏まえた需給ひっ迫・市場価格高騰対策 資源エネルギー庁