次世代再生可能エネルギー「アンモニア発電」は脱炭素の切り札になるのか!?

2021.11.17
ESGSDGsカーボンニュートラル再生可能エネルギー

2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」が日本政府より発表され、
2020年12月、温暖化ガス排出量を2050年に実質ゼロにする工程表として
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されました。

「グリーン成長戦略」では、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、
今後、産業として成長が期待され、なおかつ温室効果ガスの排出を削減する観点からも
取り組みが不可欠と考えられる分野として、14の重要分野が設定されています。

そしてこの14分野の中でエネルギー関連産業として4つの分野が挙げられていますが

今回は恐らく皆様にも最も馴染みが薄い…

が、今後の脱炭素社会の切り札として期待されている「アンモニア発電」について見ていきたいと思います。

※1 出典:資源エネルギー庁

アンモニア発電とは?

アンモニアといえばまず思い浮かぶのは「強い刺激臭がある有害物質」というイメージでしょう。

世界全体での消費割合の内、約8割が肥料として利用されてきたこのアンモニアですが、新しい用途として注目されているのがエネルギー分野での活用です。

現在日本の発電量の約7割を占めている火力発電は石炭やLNGを燃焼することでCO2を排出してしまいますが、アンモニアは水素と窒素の化合物であり、燃えてもCO2を排出しないカーボンフリーの物質です。※2

アンモニアに期待される燃料としての役割

では、アンモニアが「燃料」として注目される理由について詳しく見ていきます。

前述した通り、アンモニアは燃焼してもCO2を排出しない「カーボンフリー」の物質です。将来的には、アンモニアだけをエネルギー源とした発電を視野に入れた技術開発が進められていますが、石炭火力発電に混ぜて燃やす(混焼)ことでも、CO2の排出量を抑えることが可能です。

現在、石炭火力にアンモニアを20%混焼する実証実験が進められています。

さらに今後は、混焼率の向上からアンモニアだけを燃料として使用する「専焼」も将来的に始まる見込みとなっており、政府は2030年度までにアンモニア100%発電の技術を確立し、2040年代に実用化する目標を掲げています。

アンモニアは水素分子を含む物質です。

アンモニアは液体として運搬できるため、大量輸送が難しい水素を輸送技術の確立しているアンモニアのかたちに変換して輸送し、利用する場所で水素に戻すという手法が研究されています。

アンモニア発電は、既存の火力発電施設を改修し、専用のバーナーを取り付けるだけで発電が可能となる為、火力発電施設を廃炉にする必要はなく、新たに大がかりな設備導入が必要な風力発電などに比べて導入コストが低くなります。

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普及に向けた課題

このように、将来の脱炭素社会の実現に向けた「切り札」として非常に期待されているアンモニアですが、今後実用化のためにはどのような課題があるのでしょうか。ここでは大きく3つの課題点についてお話していきます。

世界のアンモニア生産量は年間2億トン程度で、貿易量は2,000万トンにとどまっています。

仮に、国内すべての石炭火力で20%混焼を行うには約2,000万トンのアンモニアが必要となり、すなわち世界の貿易量とほぼ同じ量ということとなります。安定調達に向けては世界的な供給網を構築する必要があります。

アンモニアは400℃〜500℃の高温かつ100気圧〜300気圧という高圧下で窒素と水素を合成して、製造されます。

窒素は空気中に大量にあるので問題ありませんが、問題となるのは合成に必要なもう一つの元素である水素の方です。

以前、当コラムでも水素エネルギーの生成について触れさせていただきましたが、現状は石炭や天然ガスを改質してつくった水素を原料としています。

化石燃料由来のアンモニアを使う限り、脱炭素燃料とはいえず、アンモニア発電を完全な脱炭素電源とするためには、水から再生可能エネルギーを使った電気分解で水素を取り出すグリーン水素や、製造過程で出てきたCO2を地中に埋めるブルー水素を使うことが必要があります。

つまり、グリーン水素やブルー水素の供給が拡大しなければ、本当の意味でのカーボンニュートラルなアンモニア発電は実現できないということとなるわけです。

まとめ

今回は「アンモニア発電」について見ていきました。

これまでも本コラムでは2050年のカーボンニュートラル実現に向けた次世代再生可能エネルギーの発電や政策について触れてきましたが、「アンモニア発電」も他と同様で大きな期待の裏側には今後解決していかなければならない課題や問題が山積みです。

今後、課題解決に向けた研究の発展などに注力し、活用に向け検討していくフェーズになってくると思われますが、官民挙げての技術開発に期待していきたいところですね。

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まずはお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。

参考資料

※1:カーボンニュートラルに向けた産業政策“グリーン成長戦略”とは? 資源エネルギー庁
※2:アンモニアが“燃料”になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先 資源エネルギー庁
※3:日本が先行しているアンモニア発電は脱炭素の切り札となるか Energy Shift