脱炭素社会における各国の評価基準とは

2022.02.15
ESGSDGs再エネ調達環境価値用語解説

~はじめに~

近年、2050年カーボンニュートラルに向けて、RE100などのような事業活動を再エネ100%に賄うことを目指すイニシアチブへの参加企業が増えるなど、日本企業の再エネ導入への意欲は高まっていると感じます。

また、欧米の先進国をはじめ世界の各地域において、自然エネルギーの電力を認証・評価する仕組みが定着しています。海外で事業を展開する企業は、国や地域によって異なる認証・評価制度に合わせて電力を調達する必要も出てきています。

今回は、そんな脱炭素社会に向けた世界の認証・評価制度について考えていきたいと思います。

  カーボンニュートラルへ向けた、

企業が取るべき具体的アクションとは?

① 欧州の認証・評価制度について

欧州では EU(欧州連合)が 2009 年に自然エネルギーの利用を促進する指令を出しています。この指令の中で発電事業者に対して、発電した電力に関する情報を「Guarantees of Origin」(GO、発電源証明)として発行するように義務づけました。

・「Guarantees of Origin」(GO、発電源証明)
対象になる自然エネルギー:太陽光・風力・水力・ 地熱・バイオエネルギーのほか、海洋エネルギー、埋立地ガス、下水処理ガスを含む。電力1MWh(メガワット時=1000 キロワット時)ごとに、発電方法の種別と発電した期間、 発電設備の所在地・設備容量・運転開始日などがわかる。国から補助金を受けている場合にはその種類も記載。

この情報をもとに発電設備の環境負荷 や追加性を確認することも可能で、欧州主要国が運営するEECS(証書管理システム)において、証書の発行量は7600億kWhにのぼりました。

また、GOをもとにNGOなどの第三者機関が独自の基準を設けて、自然エネルギーの電力を認証するラベリング制度も存在しています。

最も多くの国で使われている自然エネルギーのラベルである「EKOenergy」は、日本国内で使用する電力にもラベルを適応することが可能です。

このようによりわかりやすく第三者機関のラベルを参考にして、環境負荷の小さい自然エネルギーの電力を選ぶことができるようになっています。

② 北米における認証・評価基準について

米国を中心に北米にも自然エネルギーの電力を対象としたラベリング制度が存在しています。

近年、数多くの企業や自治体が「Green-e Energy」を標準的に使用しています。

これは、NGOのCenter for Resource Solutions が 1997年から運営しているラベリング制度で、自然エネルギーを厳格な基準で規定して、基準に合致した電力や証書に認証ラベルが付与されます。

Green-e Energyの認証を受けた電力や証書は2020年に合計で900億kWhを超え、最近の4年間で平均17%伸びています。全体の約9割は企業が購入しており、10万社以上が購入しています。

北米においては、地域によって証書の認証基準や発行システムに違いがあり、環境価値に対する評価が難しくなっています。このため各地域で発行した証書を共通の基準で評価する制度として、Green-e Energyのような第三者機関によるラベルが効力を発揮しています。

③ その他の地域の認証・評価制度について

欧州や北米だけではなく、世界各地に自然エネルギーの電力を証書で取引できる仕組みが広がっています。

その中でアジア、中東、アフリカ、南米の多くの国で証書を取引する制度も存在します。

「I-REC」(International Renewable Energy Certificate)と呼ぶ標準的な仕組みを使って証書の取引をすることができます。

国ごとにI-RECの標準に従って証書管理システムを運営しており、2020年には合計で 310億kWhの証書がI-RECで発行されました。

取引価格は各国で差はあるものの、平均すると0.1~0.2円/kWh程度となっています。(発電方法や時期により変動)。

I-REC に準拠した証書管理システムは 41 カ国・地域で使われており、アジアでは日本を含めた12カ国・地域でI-RECを発行することができます。

日本において、NGOのローカルグッド創成支援機構がI-RECの実証プロジェクトを 2021年7月に開始しており、I-RECの認証基準をもとに、地域共生型の発電プロジェクトの電力を対象にしてI-RECを発行しています。

しかし、送配電ネットワークを経由する自然エネルギーの電力の環境価値は、非FIT非化石証書として発行する必要があります。非FIT非化石証書のうち、相対契約で取引したものを対象に、I-RECによって発電源を証明するためのトラッキングの情報が付与されます。

また、非FIT非化石証書の対象にならない自家消費や自己託送で供給する電力の環境価値に関してはI-RECで認証でき、RE100やCDPの報告に利用できますが、温対法における国内ルールでのCO2排出量の報告には利用できないといった内容になっています。

まとめ

今回、GOの基準による「EKOenergy」や「Green-e Energy」に代表されるような国際的な基準や独自のラベリングについてみていきました。

環境価値については、様々な指標や評価基準が存在し、どのような取り組みを行うかは、多種多様です。 そんな中、グローバルに活躍する企業にとって、このようなラベリングなどの評価基準は今後とても重要なものになっていくのではないでしょうか。

弊社、ホールエナジーでは、小売りからの再エネ電力調達や太陽光発電の導入などにも柔軟にご対応することが可能です。もちろん、お客様の状況に合わせての取り組みについても柔軟にご対応することが可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせ頂ければ幸いです。

コラム参考資料
※1:電力調達ガイドブック第5版 自然エネルギー財団