脱炭素経営とは?企業が取り組むメリット・デメリットと背景を解説

温室効果ガスの排出増加による地球温暖化は、異常気象、海面上昇、生物多様性の損失など、人類社会に深刻な影響をもたらしています。ESG投資の拡大により、投資家は企業の環境パフォーマンスを重視し、脱炭素経営を進める企業に投資する傾向が強まっています。
脱炭素経営は、社会的な責任を果たすだけでなく、長期的な成長を実現しやすくなるでしょう。当記事では、脱炭素経営について分かりやすく解説します。
1. 脱炭素経営とは?
脱炭素経営とは、気候変動対策を企業経営の重要な課題と捉え、温室効果ガスの排出削減に取り組む経営手法です。従来はCSR活動の一環として行われていた気候変動対策ですが、現在では脱炭素を経営戦略に組み込む企業が増えています。
脱炭素経営に取り組む企業は自社の活動が環境に与える影響を考慮し、温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」を目指しています。また、RE100やSBTなどの国際的な気候協定や日本政府のカーボンニュートラル目標に対応するため、省エネ技術の導入や再生可能エネルギーの利用拡大などの対策を進める企業も増加傾向です。
(出典:グリーン・バリューチェーン プラットフォーム「脱炭素経営とは」/ https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/decarbonization.html)
1-1. 脱炭素経営が注目されている背景
脱炭素経営が求められる背景には、地球温暖化による深刻な環境問題が挙げられます。
二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが大量に放出されることで、地球全体の気温が上昇し、異常気象や氷河融解などの現象が発生しています。これにより、農業や水資源の減少、自然災害の頻発など、生態系や人々の生活に多大な影響を及ぼすリスクが高まっている状況です。
特に産業活動やエネルギー生産からの二酸化炭素排出が温暖化の主因とされ、二酸化炭素排出を抑制するための経営方針が必要とされています。さらに、国際社会や各国政府も、持続可能な経済の実現に向けて脱炭素化を推進しており、企業もその動向に応じた経営戦略を求められるようになっています。
(出典:グリーン・バリューチェーン プラットフォーム「脱炭素経営が求められる背景」/ https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/decarbonization_02.html)
2. 企業が脱炭素経営に取り組むメリット
企業が脱炭素経営に取り組むメリットは多岐にわたります。環境問題への貢献はもちろん、企業の成長や競争力強化にもつながる点が大きなポイントです。以下では、主なメリットを3つ紹介します。
2-1. エネルギーコストを削減できる
古い設備や非効率な設備を、省エネ性能の高い最新設備に更新すれば、エネルギー消費量を削減できます。例えば、照明器具のLED化や断熱材の導入など、建物のエネルギー効率を向上させることで、暖房や冷房に必要なエネルギーを削減できるでしょう。
また、再生可能エネルギーは、化石燃料のように価格変動が激しくないため、エネルギーコストの安定化につながります。
2-2. 自社ブランドのイメージアップにつながる
持続可能な開発目標(SDGs)が世界的に注目される中、SDGsの達成に貢献する企業は、消費者から高い評価を得やすくなっています。また、現代の消費者の中には、製品やサービスを購入する際に、環境負荷の少ない製品や、サステナブルな経営を行っているかなど、その企業の環境への取り組みを重視する人も少なくありません。
投資家の観点から見ると、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの側面を重視するESG投資が拡大しており、脱炭素経営に取り組む企業は、投資家から高い評価を得やすくなります。ESG評価が高い企業は、一般的に高い企業価値を持つと評価され、資金調達も円滑に行えるようになるでしょう。
2-3. 社員のモチベーション向上や採用力の強化につながる
脱炭素経営に取り組む企業は、社会から高い評価を受けやすく、企業のブランド力を向上させる要因にもなります。社会的な評価が高い企業は、優秀な人材の採用につながり、企業の競争力強化に貢献するでしょう。
「自社は社会に貢献している」という実感を社員が持てれば、企業への帰属意識も高まります。結果的に、社員のモチベーションも向上しやすくなるでしょう。
ほかにも、環境問題や社会貢献に関心を持つ優秀な人材は、企業の成長にも貢献できる可能性が高いです。
3. 企業が脱炭素経営に取り組むデメリット
脱炭素経営には多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットもあります。以下のデメリットを理解し、事前に対策を検討しておくことが重要です。
3-1. 初期費用や維持費などのコストがかかる
省エネ機器の導入や再生可能エネルギー設備の設置、工場の改修など、脱炭素のための設備投資には多額の費用がかかります。
例えば、太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用する場合、発電設備を自社に設置するだけでは電力需要を完全に満たせず、追加のエネルギー供給手段や環境価値の高い電力の購入が必要となることがあります。さらに、これらの設備導入後も維持管理にコストがかかり、短期間での投資回収は容易ではありません。
一方、補助金や税制優遇などの各種制度を活用すれば、初期費用を抑えられます。長期的な経済的効果を見据えた計画が重要となります。
3-2. 取引先との関係性に変化が生じる場合がある
企業が脱炭素経営に取り組む際に、取引先との関係性に変化が生じる可能性があります。これは、企業単独ではなく、サプライチェーン全体での脱炭素が求められるためです。
自社製品の製造過程で発生する温室効果ガス排出量を削減するために、取引先にも排出量削減を求める必要が生じるでしょう。取引先が要請に応じられない場合、より環境負荷の低い原材料を供給できるほかの取引先への切り替えも検討されます。
また、脱炭素のための投資や取り組みによるコスト増加分を、取引価格に反映させる交渉が行われることも考えられます。
3-3. 脱炭素経営に必要な技術や人員が不足しやすい
脱炭素経営には、再生可能エネルギーやエネルギー効率化、カーボンニュートラルといった専門性の高い知識やスキルが求められます。脱炭素に関わる人材は製造業をはじめ、さまざまな業界で需要が高まっており、人材不足が懸念されている状況です。
さらに、脱炭素に関わる技術は日々進化しており、最新技術に対応するのが難しい場合もあります。
4. 脱炭素経営を実践するための方法・手順
脱炭素経営を実践するための手順は次の通りです。
1.中長期的な事業環境変化の見通しを立てる
脱炭素経営を実践するには、まず中長期的な事業環境の変化を見通すことが重要です。気候変動や規制の強化、消費者の意識変化により、企業を取り巻く環境は大きく変わる可能性があります。そのため、将来の市場動向やイノベーション、法的な枠組みなどを予測し、自社の事業にどのような影響を与えるかを評価しましょう。
2.現状と今後の見通しを把握する
次に、自社の現状を把握し、今後の見通しと比較することが必要です。温室効果ガスの排出量やエネルギー消費状況を正確に測定し、改善が必要な領域を特定します。
3.施策を検討する
現状を把握したら、具体的な脱炭素施策を検討します。再生可能エネルギーの導入、省エネ技術の活用、製品やサービスのライフサイクル全体での環境負荷低減など、実行可能な対策を広く考えます。脱炭素の専門知識を持つコンサルタントやサプライヤーと連携することで、より効果的な施策を見つけられるでしょう。
4.ロードマップを策定する
短期的な取り組みと中長期的な目標を段階的に設定し、それに向けた実行計画を立てます。この際、必要な予算や資源、関係者の協力なども含めた計画を立てることが大切です。
5.ステークホルダーに公表する
策定した脱炭素戦略は、ステークホルダーに公表しましょう。株主や投資家、消費者、従業員などに対し、自社の環境に対する取り組みに関して透明性をもって伝えることで、信頼を築けます。
脱炭素経営は、企業が長期的に取り組むべき重要課題です。上記の手順を参考に、自社に合った脱炭素戦略を策定し、実行してみてください。
まとめ
脱炭素経営は、単なるコスト削減策ではなく、企業の成長戦略として位置づけるべきです。企業が持続可能な経営を行い、新たなビジネスチャンスを生み出すためにも、環境問題への取り組みが重要です。
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