二国間クレジット制度とは?〜徹底解説〜

2021.09.28
ESGカーボンニュートラル再エネ調達環境価値用語解説

以前こちらで「ボランタリークレジット」という民間主導で行っているクレジット制度があるとまとめました。※1
これに対し、日本政府が主導となって進めている制度のひとつに「二国間クレジット制度」があります。

世界的に脱炭素が叫ばれる現在、この二国間クレジット制度はまさに”世界を救う”ポテンシャルを持つ制度だと言えます。
今回はこの制度について、徹底解説していこうと思います。

二国間クレジット制度(JCM)とは

二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism、JCM)とは、その名の通り二国間の企業でクレジットを用いてやり取りをする制度です。
日本企業は優れた脱炭素技術などをパートナー国に提供し、その結果削減・吸収された温室効果ガス(GHG)をクレジットとして取得します。※2

出典:経産省資源エネルギー庁

この制度の最大の特徴は、

1.クレジットを用いて自社のGHG排出量を抑制すること
2.日本だけでなく、世界の脱炭素を推進すること

これら2つを同時に達成することができる点にあります。
自社のGHG排出量を削減するだけでなく、世界規模でカーボンニュートラルに貢献していることをアピールできます。

日本は2011年から途上国と協議を進め、現在では17か国とパートナー関係を構築しています。
既に多くのプロジェクトが実施され、中には終了してクレジットが発行されたものもあります。

JCM資金支援事業について

このような制度があるとはいえ、国内企業が海外に事業展開するにはかなりの初期投資が必要となります。
そのため、JCM資金支援事業といって、JCM制度を利用するための資金援助を行う事業があります。

この資金支援事業には「設備補助」「フロン補助」「REDD+補助」「アジア開発銀行(ADB)拠出」の4種類があります。
それぞれ対象となる事業が異なるので、ひとつずつ見ていきましょう。

設備補助

JCMの導入が見込まれる途上国において、エネルギー起源CO2の排出を削減するための設備・技術の導入に対して補助を行います。※3
補助の対象は本工事費、機械器具費等の初期投資であり、既存設備の撤去費や、導入設備の保守・点検費は対象となりません。
また、補助の上限はかかる費用の2分の1までと決められています。

補助は毎年公募が行われているため、現状最も採択されているプロジェクト数が多い補助となります。

フロン補助

途上国において、使用済み機器中の代替フロン等(エネルギー起源CO2以外の温室効果ガス等)を、
大気中に放出せずに回収・破壊することで排出量を削減するプロジェクトに対して行われる補助です。※4

設備補助同様、補助の対象は初期投資に限定されていますが、上限は6,000万円となっています。

REDD+補助

JCMの下でREDD+を実施し、途上国の森林減少・劣化の抑制を行うプロジェクトに対して補助を行います。※5
REDD+とは、途上国における森林減少・劣化の抑制や持続可能な森林経営などによって
GHG排出量を削減あるいは吸収量を増大させる努力にインセンティブを与える気候変動対策のことです。※6

2015年から始まった補助ですが、2019年を最後に公募は行われておらず、
採択されたプロジェクトも2件と、JCMの補助としては非常に事例が少ないものとなっています。

アジア開発銀行(ADB)拠出

アジア開発銀行(ADB)のプロジェクトのうち、導入コストが高いため採用が進んでいないものへ補助を行います。※7
補助を行うのは日本政府であり、補助を受けるのは現地の官公庁や公営企業です。

採択されたプロジェクト例

・シャープエネルギーソリューション

モンゴルのダルハン市における10MW太陽光発電の導入プロジェクトが2015年に採択されています。
同プロジェクトでは2017年に8,947tCO2分のクレジットを発行しました。※8

・裕幸計装

ベトナム北部・中部・南部地域の送配電網におけるアモルファス高効率変圧器の導入で2016年に採択を受けています。
こちらでは2017年に151tCO2分のクレジットを発行しています。※9

まとめ

JCMの最大の課題は、その知名度の低さにあります。
ですが、この制度はパリ協定が謳う「市場メカニズム」を実現する先駆的な例であり、今後の発展が非常に期待されています。

とはいえ、いきなり海外で事業を行うのはかなりハードルが高いと考えるお客様も多いと思います。
弊社ホールエナジーでは、そういったお客様でも導入できるクレジットなど、幅広いニーズに対応しています。
ぜひお気軽にお問い合わせ下さい。

参考資料

※1:世界で注目が集まっている「ボランタリークレジット」とは? 2021年8月24日 ホールエナジー
※2:温暖化への関心の高まりで、ますます期待が高まる「二国間クレジット制度」 2021年9月9日 経済産業省資源エネルギー庁
※3:令和3年度から令和5年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(二国間クレジット制度資金支援事業のうち設備補助事業)公募要領 2021年4月7日 公益財団法人地球環境センター
※4:地球温暖化対策推進事業補助金(二国間クレジット制度を利用した代替フロンの回収・破壊プロジェクト補助事業)公募要領 2021年9月 環境省
※5:二国間クレジット制度(JCM)におけるREDD+について 2019年1月18日 林野庁
※6:REDD+とは? 国際協力機構 地球環境部森林・自然環境グループ
※7:関連支援スキーム紹介 公益財団法人地球環境センター
※8:JCM事業の実例 太陽光発電システムの導入 SHARP
※9:JCMにおける配電網への高効率アモルファス変圧器の導入事業 裕幸計装株式会社