電力自由化とは?自由化後の電力供給の仕組みも解説

2023.12.27
電力業界制度

2016年4月1日に開始された電力自由化により、企業や家庭などすべての消費者は、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになりました。生活や経済活動に欠かすことのできない電気を、ライフスタイルや価値観から選択できる時代になったのです。

今回は、電力自由化の概要から電力供給の仕組み、自由化に伴うメリット・デメリットについて分かりやすく解説します。

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電力自由化とは?3つの目的も解説

電力自由化(電力の小売全面自由化)とは、各地域の電力会社が独占していた電力事業に新規参入が認められたことにより、消費者が電気の購入先を自由に選択できる様になったことです。
これまでは、住んでいる地域により電気の供給先が決まっていました。例えば、関東なら東京電力、北海道なら北海道電力という形です。
電力自由化により、通信会社や商社、ガス・石油会社など異業種からの参入や、再生可能エネルギーのベンチャー企業など様々な事業者が電力市場に登場しています。
電力自由化は2000年3月に大規模工場やデパートなどの特別高圧区分から始まり、2016年4月からは家庭や商店などの低圧区分に拡大しました。

では、電力自由化の目的とは何でしょうか?

電力の安定供給を確保するため

最大の目的は、地域を超えた電力供給を実現させ、電力の安定供給を確保することです。
2011年の東日本大震災では、原子力発電所や火力発電所が被災したため、東北と関東で大規模な停電が起こりました。
この教訓を活かし、被災地以外からも電力供給できる仕組みが必要になったのです。
電力自由化を機に、電力広域的運営推進機関が設置され、日本全国でエリアを超えた電力供給が可能となりました。

電気料金を抑制するため

電力自由化前は、市場を独占していた大手電力会社が国の規制のもと電気料金を決めていたので、競争原理が働かず電気代が安くなることはありませんでした。
しかし、自由化によって新たな企業が参入したことで価格競争が始まりました。競合が増えることで電気料金の値下がりが期待されています。
2023年12月現在、731社が小売電気事業者として登録されており、 各社が様々な料金プランを展開しています。

参考:資源エネルギー庁 登録小売電気事業者一覧

利用者の選択肢を増やすため

電気の購入先を自らの意思で選択できるようにし、電気利用者の利便性を向上させる狙いもあります。
例えば、電気とガス、電気と携帯電話などの組み合わせによるセット割引やポイントサービスを利用したり、再生可能エネルギーの普及に貢献するため事業者を選んだり、地方活性化のためにふるさとで発電された電気を購入したり、電気の地産地消のために住まい近くの事業者に購入先を切り替えるなどが可能になりました。

電力自由化で電気が送られてくる仕組みが変わる?

電気は、作られてから消費者に届くまで以下の3部門に分かれています。
電気を作り、送り、売るという流れはこれまで通りなので、電力自由化されても家庭や会社に送られてくる電気の仕組みは変わりません。

①発電部門(電気を作る):原則新規参入は自由

②送配電部門(電気を送る):国からの許可制

③小売部門(電気を消費者に売る):全面自由化

発電部門は、化石燃料や自然エネルギーなど大小様々な事業者が発電所を稼働させることができます。物理的に電気を消費者に届ける送配電部門は、停電を防ぎ電力の安定供給をする必要があるため、電力自由化後も国が許可した企業(各地域の電力会社)が担当します。
このため、物理的な電力供給の仕組みに変化がないので、小売部門の電力会社を切り替えても電気の質は変わらないのです。

電力自由化のメリット3つ

電力自由化により消費者にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは主要な3つの利点を解説します。

競争により価格が安くなる可能性がある

電力自由化の目的のひとつであり、消費者にとって最大のメリットとなるのが「電気料金の値下がり」です。
市場にプレーヤーが増えると競争原理が働き価格が下がります。
電力自由化前は電力供給できる会社は全国で10社(北海道/東北/北陸/東京/中部/関西/中国/四国/九州/沖縄電力)だけでしたが、現在は700社以上あります。
新電力と呼ばれている新規参入企業は、電気料金の値下げだけでなく、割引やポイント付与など消費者を獲得するために価格面での創意工夫をしています。
これに対抗するため古参の電力会社も新プランを打ち出し、価格面でのメリットをアピールしています。これにより全体として電気料金が値下がりする可能性があるのです。

消費サイドのさまざまなニーズに対応できるようになる

再生可能エネルギーの活用や環境保護に興味のある方は、クリーンエネルギーで発電された電気を購入したり、地域やベンチャー企業に興味のある方は新電力を選んだりと、電気購入を通じて社会課題の解決に貢献することができます。
また、電気とガス、電気と通信など請求を一本化するプランを導入することにより、経費管理の負担軽減・光熱費を削減することも可能です。ガソリンやEV(電気自動車)の電気料金が割引になる車関連の特典があったり、毎月の電気料金に応じてネット通販のポイントを付与したりするなど、消費者のニーズに合わせた多彩なプランが登場しています。

スマートメーターの普及につながる

スマートメーターとは、通信機能を持ち30分ごとに電力使用量(kWh)を測定・記録する 新しい電気メーターです。これまでは、検針員が月に1回メーターを確認し電力使用量を確認していましたが、スマートメーターでは電力使用量がデジタル表記され、随時確認できるようになるので、節電に役立てることができます。
新電力に切り替える際はスマートメーターへの交換が必須になるので、国が進めるスマートメーター普及に貢献できます。政府は2024年までに切り替え作業を完了させたいとしています。また、ブレーカーの自動復旧も可能なので、停電時の復旧が早い点もメリットと言えるでしょう。スマートメーターへの切り替えは無料です。

電力自由化のデメリット2つ

電力自由化には気をつけなければならないデメリットもあります。新電力への切り替えを検討する際は、以下の2点に注意しましょう。

倒産・値上げのリスクがある

新電力は比較的新しい会社が多いため、財務基盤が脆弱で経営難から倒産に至るケースもあります。帝国データバンクの調査では、2023年3月時点で新電力の195社が倒産・事業撤退したことが分かりました。これは新電力の20%を超える割合です。
そして、日本はエネルギーを輸入に頼っているため、燃料高騰の影響を受けやすい状況です。
2022年はウクライナ危機や円安による急激な燃料高騰があり、大手電力会社のみならず新電力も電気料金を値上げしました。

解約時に違約金が発生する場合がある

新電力の中には、契約期間内の解約時に違約金が発生する場合があります。
電力自由化前にはなかった概念ですので、新電力への切り替え時は、契約期間と違約金の有無、違約金額を確認しましょう。
一般家庭の違約金は数千円〜1万円程度ですが、法人契約の場合、例えば高圧や特別高圧など電力使用量が多い企業は、数ヶ月分の違約金が発生する可能性もあるので注意が必要です。
また、更新費用やオプション費用を請求される場合もあるので気をつけましょう。

まとめ

電力自由化は2000年頃から欧州で導入され、ASEANでも取り組みが進んでいます。
日本も世界的な潮流により2016年に自由化を完了しました。電力市場が活性化することで新たなビジネスが生まれ、消費者の関心も高まることでしょう。

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参考資料

資源エネルギー庁「電力供給の仕組み|電力小売全面自由化」

Looopでんき 電力自由化とは?仕組みやメリットなどを解説